？？？が口で書いた手紙

『おじさんへ
手紙が書きたくなったのでお手紙をしたためました、手紙以外の内容のなら口で伝えた方がとっても解りやすいです、でも手紙を書くことは感傷を大切にする良い事なので、手紙を書くことを手紙にしたためようと思います。手紙を書いた事は今まで無いから、これが自分の処女作且つ最高傑作です、よかったね。
何でお手紙を書こうとしたかはあんまり覚えてないです、でも便箋を選ぶのは楽しかった、何の便箋にしようか沢山悩んで季節感のあるのにします、十月らしく南瓜とか霊魂をデフォルメしたのにしようと思ったけど、このお手紙を読み返した時に四月とか六月とかだと季節感が無いので、雲の柄にしました。雲の柄がどうしても夏のしか無いから、自分で作りました、空の雲を沢山集めて作ったから、きっと湿っているけど問題無いです。
おじさんは今日こうやってお手紙を貰って嬉しいですか、書くのは楽しいです、こうやって沢山書いてその手紙をおじさんが手にとって見てるんだー、って思うと嬉しくなります、長く書けば長く書く程長く見てくれる事になるので、これからはとっても長く書きます。手紙は形に残るから十年位してから見直すと良いですね、焼芋を焼くのに使っても良い感じですね。
ちょっと席を立っていました。最近すっごく体が重いです前は空気みたいだったのに、すごくほわんしてます。お腹のあかちゃん達の命が日に日に増していく気がして、体は重くなってくのにすごくあったかいです、これが普通の生き物の感覚なのかな。ちゅーって栄養沢山吸って、命からちゃんと体を持った生き物になって、ちょっとだけ妬けちゃう気がする。苦しくなると、お母さんになるのと魂が生き物に近付いてるのかもしれないって思って、嬉しいです。きっと兄妹仲は良いです、仲がとってもよくて、あかちゃん達はふわふわしてます。しあわせー。
最初は手紙を代筆してもらおうと思った、でもやっぱり、手作りは良いね。敬称とか付けるべきなのか解らないけど、おじさんはおじさんだから付けません、付けてもあんまり気にしない気がするので、おもいっきり卑下しようかとも思ったけど、やっぱりおじさんを卑下するときっと泣いてしまうのでしません。泣くならこの胸で泣いてね、最近大きくなったから。葉書と封筒はどっちがいいか迷ったので、葉書に便箋を貼り付けて封筒に入れます、すごい。
ずっと先になって押入れから見つかったら見せてください、一緒に見ましょう、おじさんと産まれて物心付いた位の子と一緒に。きっとまた、手紙が書きたくなると思う。その時は一緒に書いてね。
此処まで書いておいて、やっぱりちょっと恥ずかしいです。だから出しません、シャイなんです、しゃいしゃい。やっぱり手紙を書いたことは、自分の口で言いたいです。おじさんは毎回思い出す物を用意しなくてもちゃんと覚えていてくれて、ちゃんとお話してくれるから、手紙じゃなくっても平気です。ありがとう。
この手紙はおじさんの枕元の水差しとコップを置いたお盆の下に置きます、その内気が付いたら読んでね。恥ずかしいいらない物だけど、お手紙です。
なお、この手紙には別に爆薬とか仕掛けてないから自動的に爆発しないので、可愛くないけど、大切にしてあげてね』



「……しかと、受け取った」
「ゲラゲラゲラ」

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