木っ端会話文：なまこはご立腹のご様子で御座います

「いひゃい、頬ひっぱるにゃ」

「今日は折角のお月様が見れなかった日の次の日だから、すっごくわるくなるの。
　手はじめにおじさまをひっぱるの、次はすてるはずのくつしたせんたっきにいれるよ」
「折角洗って勿体無いから、ってまた履く事になりそうだから止めろ」

「おじさまのゲタさん、おしいれのなかにかくしちゃったよ！」
「入れた場所を言っちまったら……おい、いやまて、どの部屋のどの押入れだ」

「せんざいのなかみをぐちゃぐちゃにもしちゃうよー」
「ちょっとまて、それだけは止めろ、混ぜるな危険だろうが」
「危ないの？　リンスとシャンプーは混ぜても平気だよ？」
「混ぜると有毒ガスを出す組み合わせが……要は俺が取り返しの付かない事になるから止めろ」
「取り返しが付かない？　おじさま、わたしのこと嫌いになっちゃう？」
「好きとか嫌いとか、そういう事も二度と言えなくなるし、頭も撫でてやれなくなる」
「ひっ……ごめんね、ごめんね、おじさまごめんね」
「解れば良いんだ、悪戯は別に良いがあんまりやりすぎると悪戯で済ませられなくなるからな」

「でもでもっ、いたずらしてもわるいことをしたのは初めてなの、だから……ゆるしてくれる？」
「いや悪い事は……ああ、そうか、そうだな」

（月並みだが、悪意が伴ってなきゃ悪戯じゃ済まされない沙汰も悪業じゃない、か。
昔どっかで聞いた、子供が豚殺ごっこした話、こんな所で思い出すとはな）

「おじさま？」
「安心しろ、ちゃんともう許してる。だから下駄を何処に隠したか教えてくれ」
「えーと、えーと？　あえ？」
「…………」
「わすれちゃった☆」
「さて、見つけるまでに幾つの秘密基地掘り起こす事になるんだか……ハァ……」


（それとも、人間が虫を捻り殺しても心が痛まない様に、人外だから心が痛まないのか。
なら俺は、一体何者になっちまってるんだろうな）

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