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端午の節句SS:ショタ×3 [小ネタ]

このゴールデンウィーク中、睡眠時間が狂いまくって酷い。 常に深夜テンション。
明後日は仕事なんで、それまでに戻せますかな? むりでござる。


端午の節句SS
をとこのるーる

登場キャラ:おじさん 0012 0013 0014

バカ度:★★★★★
精神有害度:★★☆☆☆
(清々しく端午の節句が関係無い)







をとこのるーる



5月5日、端午の節句、俺の夕飯に鯉幟の形をした旗が立っている。

本日もまた一日中コキ使われて家に帰った所、同居人の誰かが飯を用意していってくれたらしく、みっしりと仕事が詰まって食う暇も無く、暇無しの空腹をインスタントで済ます、なんてことにならずに済んで非常にありがたい。
その辺り何時も同居人は律儀で、何があってもとりあえずそこまで遅くならなければ、晩飯は用意してある。タイミングを見計らったように、風呂まで沸いている事もある。それが居がの、出来れば遠慮したい事が待っている時もある。
兎に角、今日の晩飯はオムライス。俺が好きだからか、同居人達が好きだからか、基本的にメニューは和食がメインだが、今日は何故か洋食だ。デザートにでもしろというのか冷蔵庫を見た所、柏餅があった。和洋折衷。
そして更に珍しいことに、同居人が俺とテーブルを一緒に食事をするらしい。同居しているなら頻繁にありそうだが、向こうには向こうのサイクルがあるらしく、俺の飯を作っても自分は食べなかったりする奴が多い。何かを食べている姿を、ただの一度も見た事が無い奴もいる。

テーブルを囲んでいるのは、基本的に十代しか居ない同居人達の中でも、特に幼い、幼稚園やら保育園やら小学校やらに通うような、幼児と呼べるような年頃の子供だった。人間ではないので、実年齢は考えずにだが。
他三人のメニューも同じオムライス、多分これを作った奴は、こいつ等が今この時刻に居る事を想定して、全員分を纏めて作ったのだろう。端午の節句、何か名のある日には何かが起こる。暇を持て余した同居人が、俺に何かを仕掛ける。

そして何故か、俺のオムライスの上にだけ鯉幟の形をした旗が、まるで『何を当たり前の事を言っているのか』と言わんばかりに立って、紙の尾鰭をはためかせている。多分、これを立てたいがために、オムライスなのだろう。
だが、その紙の真鯉の雄姿は、透明な体に奇抜すぎる服装の子供によって、文字通りに摘み取られた。別に旗を盗られて騒ぐ事は当然無いが、それを見ている二人は、目線を一気に透明な子供に向ける。
そして、その旗を自分のオムライスに立てると、透明な子供は得意げに鼻を鳴らして笑いながら、その旗を指で動かしだした。何にせよ、腹が減っているので早く食べたい。
何かまた起きるのかと思って、先に食事を進めようとすると、俺の手元からスプーンが飛んだ。右隣に座った仮面の子供の紙の一房が、しゅるしゅると威嚇をする蛇の様に動いている。食うな、という事か。

「人の想像し得る事は全て在り得る現実である、なら麿は麿がドロボーになるだなんて、想像してないでおじゃる。
だから、麿はドロボーなんてしてないでおじゃる♪」

「4点なのだよ」
「さんてん」

透明な子供は、お立ち台の上で発表するかのような溌剌とした雰囲気で、声高らかに宣言らしき物をする。俺は何を言われたのか理解出来ないが、その理解の及ばない範疇の中、二人の間では何かしらの採点が行われ、何かしら、一般人からすれば宇宙外な発想による点数付けが起きた。

正に負けたとばかりに悔しがる透明な子供は、紙の真鯉を摘み取り、自分の手前に座っている仮面の子供のオムライスに刺すと、自分のスプーンを俺に渡す。全く意味が解らないが、とりあえず受け取る。
その手に取ったスプーンで、また先に食事をしようとすると、今度もまた俺の手から強引にスプーンが剥ぎ取られた。見ると、左隣に座った透明な子供の手が煙のようになるのが見える。徹底的に食わせる気は無いらしい。
仮面の子供は真鯉の刺さったオムライスを見ると、突然旗を摘んで、また別の場所に刺し直す。自分で刺したかったのだろうか、その様子は妙に誇らしげで、面の下は先程の透明なの子供と同じ様になっているのだろう。
人の想像し得る、というそれは昔から事ある事に何処かで引き合いになるのを聞いた事があるが、実際学の無い俺はそれの書かれた本を読んだ事など無い、言った人間の名前も知らない。ただ、ぼんやりと人から聞いただけだ。
俺の真向かいに座るチューリップ幼児、もとい傷だらけの子供は、先程から殆ど沈黙を守ったまま、今は透明な子供と共に仮面の子供をじっと見ている。今また構わずに食事をしようとしたなら、次飛んでくるのはこの子供の何かだと確信している。

仮面の子供は例に習って咳払いを一つすると、またお立ち台の上で発表するかのような溌剌とした雰囲気で、声高らかに宣言らしき物をする。次もそうだろう、その次があったなら、それもそうだろう。

「そもそも君、人間じゃないじゃないか。
それに、百歩譲って君が人間だったとしても、僕、あるいは私が君が泥棒となる事を想像したなら、その考えは破状するのだよ」

「ろくてん?」
「七点でおじゃる」

全体的に先程よりは点数が上だが、やっぱり何を基準にしての点数なのかは、俺には理解出来ない。口を挟んでみようかと思ったが、腹が減りすぎて気持ち悪くなってきたので止める。このまま放っておいても、どれだけ続くか解らないので、後一度続いたら止めさせたい。

表情が窺い知れないため、悔しがっているかどうかは解らないが、静かに溜息に似た息を吐くと、仮面の子供は真鯉を摘み取り、傷だらけの子供にそれを渡した。楊枝の側の脇を持ち、旗の側を差し出す。そして、やっぱり俺にスプーンを渡すのだ。
スプーンを手に取った瞬間、その手に取ったスプーンは俺が何もしようとしていないというのに、強引に弾き飛ばされた。やったのは傷だらけの子供、人間的に考えるなら、舌の様な部分が回りを探る蜥蜴のように忙しなく動いている。俺が何もしていなくても、手に取ったスプーンを弾かれるのはあたりまえのことらしい。
もしや、それがゴングの代わりか何かなのか。人間の論理に当て嵌めようとするだけ馬鹿らしいが、それが終わった後、傷だらけの子供は自分がトリということもあってか、少し照れながら真鯉をオムライスに突き立てる。
いい加減にもう止めてもらおうか、あまり長引くと食事が冷めてしまいそうで、家に帰ってまで冷や飯は遠慮したい。冷や飯のチキンライスは、確実に美味しくないであろうから。手元に三つになったスプーンが、本来の用途を果たせないまま、白熱灯の光を反射していた。
トリの結果によって何か決まるのか、そういうルールなのかは知らないが、傷だらけの子供を見る二人の目は熱く、真鯉もパタパタとはためく。そういえば、風も無いのに如何して動いてるんだ、これ。

本人の大乗り気らしく、先程からの二人に打って変わって、普段子供らしく高い声を出来る限り低くしたらしい、返って可愛くなった声で、本人的にはおどろおどろしく傷だらけの子供は宣言した。

「そんないちいちてつがくしても、ぶつりてきかんしょうをしちゃえば、こんなはたいちまいすぐにかいけつしちゃうよ。
われこそはあくのまじん、そんなことどうでもいいからはたよこせー」

「2点なのだよ」
「八点おじゃる」

二人の意見は割れていた。傷だらけの子供は、また俺に手元のスプーンを俺に渡そうとする。ああ、まだ続くらしい。今度は一巡してまた仮面の子供だろうか、それとも全員で?
もういい加減付き合えない程腹が減って、今度は痛くなってきたので、ずっと預けられ付けていた二つのスプーンを二人に差し出して、いい加減食事にしようという意思を伝えようと思う。
そういえば、どうして俺はこいつ等の訳の解らない事態に付き合っていたのだろうか、それはもう過去形になったが、それをどれだけ考えようとしても、霧を掴もうとしているかのように、全く思考できない。まるで、こいつ等の行動の理由を探っているように、全く終わりが見えない。

「なあ、白熱している所悪いがお前達。
冷める前に飯にしないか?」

「「「いただきまーす」」」

……三人は恐ろしく素直だった、俺が言った次の瞬間、全ては最初から無かった事とばかりに食事が始まる。今度はスプーンを弾かれる事も無く、一口チキンライスを口に運ぶ。
結局、最後まで俺の前で起こっている事は何一つ理解出来なかった上、俺のオムライスから真鯉は消えた。

最後の、圧倒的な力は論理を被う、直訳したそれは俺も現在進行形で感じているよ。
俺自身のおそらくは正常な判断と引き換えに。だった、判断と引き換えに。
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