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SS:久しぶりにこっちをこうしんだお! [小説]

何時の間にか普通の文が書けなくなってたので、ちょっとリハビリかでら息抜き。
本編どうしたって?クライマックスすぎてかけねぇ!何度書いても納得できねぇ!!


凍える理由、温まる理由

登場人物:蟲飼の子 0012
脇役:黄泉坂の子

ぐうぐう

冷たい度:★★☆☆☆
精神有害度:★★☆☆☆
(短い)
(リハビリ)






一面の銀世界、青が染み渡った凍土、空に永遠に拡がるオーロラ、静かに全てを見守る星の瞬き、此処はリヴリーパークの公式パークの一部。

現在時刻はもう丑三つ時を軽く過ぎ去り、本来なら此処には雪遊びに興じる者が溢れているというのに、しんと静まり返って、ただ凍土が雪の青い影を落としている。

そんな中、何時から現れたかも解らない誰かが一人、銀の髪は雪と水と、何かの赤い残り香に濡れて、黒い服はじっとりと何かを含んで重そうに。
耳が利く者が聴けば解る程度だか、よくよく聞けば人外の足音を立てて雪の上を歩いてゆく彼は、大仰なゴーグルをつけた目を何処かに向ける事無く歩く。

彼の全ては作り物、出来損ないの体、見えない目。

白い雪に点々と足跡が残る、その足跡も直ぐに新しいデータに満たされ、音も無く前触れも無く、波に飲まれるように消えてしまった。
その誰かは、一つだけ出っ張った凍土からバサリと無造作に雪を掃い、行儀悪くその場にどっかと座って、懐からブランデーを取り出すと、ぐいと飲み干した。
体が冷えてしまった、酒は冷たく冷え切った喉を焼ける様な感覚と共に貫き通り、血液の一片にいたる隅々まで一瞬で染み渡る。

これだから人は酒を飲む事を止めない、この誰かもそうだ、今体は十分に温まったというのに、まだ酒を飲む事を止めない。

そんな誰かの横に、仮面をつけた子供が一人、雪と共に音も無く現れる。
緑色の豊かな髪を揺らせて、その様子はまるで春の訪れを描いた絵にも見えたが、硬質で禍々しい仮面がそれを阻む。

子供は手を取り、自分の固い頬に押し当てると、哀れむように最初は呟くように、最後は言い聞かせる様に言った。
手を取られた誰かは、子供の突然の奇行に、一瞬跳ね除けようとしたが、させたいままにさせて、自分は少し傍観をし始める。
普段少しの挑発でも怒りを露にする彼が、それは別の言い方をするなら、この子供を相手にすることすら、面倒な程疲れていたこともある。

銀色の長い髪に雪を積もらせる誰かの手を取る子供の手は、青色に染まった凍土のように冷たく、少し力を入れて握り返すと、突然の体温に驚いた神経が、一、二度びくびくと震えて、子供は痛みにうめいた。

「君の手は冷たい、まるで何もかもを拒絶する手だ。
人を殺め、その血と臓腑で手を温めても、それを所詮は仮初の熱、人の腑など時が経てば簡単に熱を失い、ただの塊に……。
それではいけない、本当に君を凍えさせているのは、君自身が全てに怯え、拒絶の意を持って居るからなのだよ。
何者かに理解されるためには、その何者かを理解しようとしなければならない、その理解は及ばないかもしれないが、きっとそれは無駄にはならない。
君、真の熱というものは、君の此処に宿るべきなのだよ」

そう言って、子供は今度は懐に体を寄せて、胸に顔を埋めると、恍惚とした声でまた喋りだした。
緑色の新緑の匂い、春の香りのする物を自分の胸全てで包み込む、辺りはこんなにも冷たいというのに、此処だけは春の様だ。
抱きとめた子供の体は、作り物の手足よりも冷たい、人工物であるそれより冷たい体を抱き締めると、今度もまた子供の体はびくびくと戦慄いた。

「君は少しだけ、疲れすぎているのだよ。
それまで僕、あるいは私が温めてあげよう、神代の熱なら、哀れな迷い子を温める事に相応しい」

仮面をつけた子供は、仮面の下の目を瞑り、そのまま動かなくなると、薄い息を立て始めるのだった。









「おろろー、珍しい組み合わせダネー☆」

「何だよ……笑いに来たのか?」

それから暫く経った後の銀世界、其処に今度は少々騒がしく、灰色の髪を揺らせながら、一人の男が現れた。
忙しなく新しい足跡をつけながら歩く男の片手には、ビニール傘が握られていて、もう片方の手では上等な灰色の傘を差しながら、当然の様に雪には濡れていない。
男は、目線より下に座っている、すっかり雪の積もった銀髪をぱたぱたと掃うと、その懐でぐるりと丸まって寝息を立てている子供を見て、和やかに笑った。

「こいつが寝てる所初めて見たー…こんな風に寝る事あるんだねー♪
自分なんか嫌われてるみたいでさぁ『いっしょにねよ☆』って言っても、凄い説教されるんだよネww」

「それはてめぇが色々持ち込んでるからだろ?
まさか雪ん中、ガキのお守りの為に立ち往生たァ考えても見なかったよ」

ふーん、と。
そっけない返事を男が返すと、懐の中の子供がもぞもぞと動いて、近くにあった物を構わずに巻き込んで、体を温めようとし始める。
どうやら本格的に眠ろうとしているらしい、抱きとめていた体は自然と温かくなっていて、今は熱い程、これは子供が眠がっている証だ。
それに気が付くと、男は手に持っていたビニール傘を手渡して、風邪を引かないようにと言うと、とっとと立ち去ろうとし始める。

一瞥もくれずに別れると、後に残ったのはまた二人。
銀の髪はまるで銀の鉄弦のように冷たくなって、体の芯までもが冷え切って死んでしまいそうだ、死ねるものならの話だが。

少し考えて。

雪を掃った場所に子供を寝かせると、その上に傘を被せて帰ることにした。
この子供に義理や恩は無い、別に死ぬような奴ではないし、これでいいだろうと思う。


ただ少し考えた。

「あのガキは、何か理由がないと眠ったり、体を温めたりする事もできねぇのか?」

同情をしてやる立場でも無い、だからしない。
何より、あの子供が自分に擦り寄る理由は、自分が最も嫌う理由からであって、あの部類の人間は本来嫌いなのだから。

哀れ、腕も無く、足も無く、目も無く、だから神は擦り寄る。

そうでないと、神は凍えたまま。


随分なバカもいた物だ。
そう呟きかかって、ガラにもないと口の中で食いつぶすと、振り返らずに電脳の海へと身を投じた。

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コメント 1

陽

良い小説ダスね!!

コピペで失礼します。
なんの報告もなく購読していたことを深くお詫びいたします。
BY陽
by (2008-11-26 19:17) 

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