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敬老の日SS:敬う故に愛す。 [小ネタ]

近日中…23日までに、三日間の更新停止までに新キャラをアップするよ!
あと、新しいバトン受け取っちゃった…w



敬老の日SS
じんちょうのよびごえ

登場人物:おじさん 蟲飼の子

ほのぼの:★☆☆☆☆
精神有害度:★☆☆☆☆
(かなり短いです)
(筆者はほのぼののつもりで書いてます)




じんちょうのよびごえ



「あ、お帰り」

一日前の惨劇の後、気配を忍ばせる様に入った自宅で極力の気配を抑えた俺を出迎えたのは、蛍光灯の明かりを反射する硬質なゴーグル。
今日はコイツの番だったか、最早次に何が来ても右から左に受け流す準備と、現実逃避の準備をしていた俺は、思いの他安堵した。
少なくともコイツは、正気とは言い難い物はあるが、昨晩の様に右に左に蛇行して、おかしな方向に迷走する奴ではない、今の所はだが。
それにしても、コイツが自分から進んであいつ等の遊びに加わるとは思えない。
コイツもまた巻き込まれたクチなんだろうか、それならまったくもって災難な物だ、哀れみも同情はしないが。

「まさかとは思うが、次はお前か」

目の見えないコイツには足音が無い、気配を消した俺の足音を察したのは正直驚いたが、犬が物を追うのが得意な様に毎日使っている物なら、研ぎ澄まされて当然か。
相手は無造作に俺の鞄をひったくる、多分、部屋に置きに行ってくれようとしているんだろうが、けっこう勢いをつけてひったくられたせいで、手の甲が擦れて痛かった。
まあ、やってくれるだけ感謝だが、自嘲する様に口の端だけ上げて笑うコイツを当然の物として見ると、自分も本当に同居人達に慣れた事を自覚する。

「ああ、ほぼ押し付けられたに近けぇがな」

「お前も災難だな」

やっぱりだったか、何処かで読んだ本に書いてあったが、動物でも何でも遊び好きは頭の良い証拠らしい、あいつ等の場合は『頭良い』が一周している気がする。
何せ遊びで自分の人生捨てられる人種だ、自分の相手にする客には欲望破滅タイプ、そんな奴が多い。
そんな人間を地獄に堕とすのが俺の仕事だが、何であいつ等は、目の前のコイツも、破滅する事が無いのだろうか?
稀に居る、それが『許される』人種なんだろうか、まあ地べたを這いずる俺には、そんな宇宙人の思考など関係ない事だが。

「ま、俺は他のバカと違げぇし、ラクにしてていいぜ」

その言葉、信用して良いんだろうな?
それにしても、コイツは他同居人がそこまで好きではない事は知っていたが、そんなに堂々とバカっつって良いのか?
数日前に俺の鞄と靴に盗聴器が仕掛けられていた事があったが、アレは誰の仕業だったんだろうか、全員に可能性がありすぎて全く見当が付かない。
その盗聴器その物も取り出して保管していたと言うのに、つい二日前に無くなって、こりゃあ明後日には迷宮入り確定だな。

「ちったあ信用してくれよ」

そうだった、コイツは『心読み』が出来るんだったな。
全部が全部見えている訳では無いが、突発的に読む事が出来て、制御が出来ない物なのだと他の同居人に聞いた。
便利な能力だとは思うが、今俺が考えていることも筒抜けだと思うと、少し寒気がしないでもない、だから如何したと言う話だが。
それでも深刻に危機を感じないのは、俺自身正気じゃなくなってる証拠だろうか?
さて、今は何処から何処まで見えていたのやら、最初からか、それとも今だけだったか。

「それでも一応は俺の世話を焼いてくれるんだな」

「敬老の日はとりあえず他人の労を労う日なんだろ、だったら別に俺が何んかしても可笑しくねぇさ」

ああ、危ねぇ、一昨日思い出した『敬老』と言う言葉の意味を昨日の惨劇のせいで忘れかかっていた、昨日の事はもう二度と思い出したくない。
今日はコイツの言葉を信じるなら笑えない事にはならなそうだが、普段の事を考えるならそこまで期待をするとコイツに悪そうだ。

「老って所が気になるがな、本当に律儀な奴」

本当に律儀な奴、こんなんで良く今まで生きてこれたな、これだけ見れば十分に正気に見えるってのに、悪魔は天使より美しく笑うって奴だな本当に。
俺に恩でも感じているんだろうか、それを聞いてみたい気がするが、コイツの場合はそれを聞くと返事より先に蹴りが飛んで来るだろうから、聞かないで置こう。
答えがどうであれ、自分の観点からしか物が見れないなら、せめて自分の都合の良い様に取らせてもらうさ、別に構わねぇだろう。

「今の所は……洗濯物やっといた、あと郵便受けの取り込み、飯は作れねぇから自力でどうにかしてくれよ」

「何時もと大して変わらないな」

まあ、何時もは何もしない所か、家に居ない事も多いのだが。

「明日にはバカにお鉢が回っちまうんだ、今日ぐらいこっちの方が良いだろ?」

そりゃそうだ、数日前に無くした『何時も』が今日にだけ帰って来た、そう思うならそれ以上のサービスは無い。
本当にお前は、嫌うより好きでいた方が良い奴だな。

「お前は本当に律儀な奴だ」


そうして、今日は普通の飯を食べて、普通の酒を飲んで、普通の布団で寝た。
食事中に、アイツがふざけて『おじいちゃん』とか言っていた、我慢だ俺。
明日になったら何があるかは知らないが、俺が今を記憶していられる内は問題ないだろう。
目が覚めて、コイツがまだ部屋の中に居たのなら、蹴られる事を承知でもう少し会話の続きをしてみようか。

まあ、それも全て眠夢の先の事だ。

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