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木っ端会話文:神遊びも酣 [小ネタ]

『おはよう』
「……おはよう」
『瞼が開かないのは眠ってるからだ』
「じゃあ此処は、また俺の夢の中か」
『違う、此処は無意識の中。瞬きの一瞬』
「真っ白けで殺風景な、また稀有な所に来たもんだ」
『本当は真っ白でもないんだけど、治るまではそう見える』
「治る……? そうだ、俺はあの後どうなった」
『覚えている?』
「思い出したくないがな」
『意識不明のところを看病されてる』
「そうか。手間を掛けさせるな」
『外の世界ではこうやって周りの人間の無意識に働きかける事によって、無い存在を在る物として知覚させる状況を作っている。同じ様に無意識干渉された人間が十人集まれば、互いの内部記憶より自動的に生産される記憶によって、その存在が消失した事には永遠に気が付かない』
「つまり、外界で俺は居なくなってもそこに存在してる事になってるのか」
『そう、居た、という事実だけが残ればいい。人間の寿命を仮定して七十八歳までセット』
「用意周到……それ、どっかで聞いたな」
『昨日説明されていた、お使い』
「ならついでに頼まれてくれ」
『いいよ』
「適当な頃合に『話を最後まで聞かなくて悪かった』って伝えろ、頼んだ」
『理解した、あ、誰か人が来た』
「もう少しゆっくりさせてくれよ……」
『今日は病み上がり、大丈夫、皆手加減はする』
「手加減ねぇ。ちょっとまて、一つ聞かせろ」
『早く行かなきゃ、なに?』
「別に俺は失明したとかじゃないよな」
『ええ、今は』
「そうか、ならもう起きる」
『おはよう』
「おはよう」





にゃーん

「お前も、こっち来たのか」
「ねこねこねこ~♪ あ、おじさん起きたー?」
「ああ、体がかったるい気がするがな……」
「おじさんが元気になると思ってぇ、猫ちゃん連れてきましたぁ~。
どうどう? おとーとにも内緒で、一人で全部やりまひた!」
「偉いな、頭こっち寄せろ……よしよし」
「えへへ~、もっとホメていいよぉ~」

ぶにゃー

「そういえば僕結婚したんだよねぇ、その猫と」
「おめでとう」
「………………」
「…………?」
「いえ、場を和ませる軽いジョークを使用しただけなので、深い追求は不要です」
「あ、悪い」
「他にもジョークを使用致しましょうか? 人間はジョークで空を飛ぶと言います」
「じゃ、なんか一つ」
「隣の塀に囲いが出来たってねぇ、へーかっこいい」
「……」
「…………」
「俺が悪かった」

「うっうー♪」
「ああ、お前もこっち来い、よしよしすっから」
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