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バレンタインSS:期間限定特別苺チ□ルチョコレート三個入り350円(税込み) [小ネタ]

バレンタイン連続更新、一度に二つ書いたの久しぶり…!
そういえば、遅れ馳せながら、
定晴さん・陽さん、お誕生日おめでとうございます!
なんだかロクな祝い方もできてませんが、心から祝福しております。
今後も、このヘッポコ文章書き、ダレカと仲良くしてやってください。

SS第二段、じいさんのターン!


バレンタインSS
だってあんた言ったじゃないの。

登場キャラ:おじさん 忘我の頤

危険度:★★★☆☆
精神有害度:★☆☆☆☆
(短いです)
(またおじさん酷い目にあってます)
(その後のおじさんの安(略




だってあんた言ったじゃないの。



「今日は何の日だったかのう」

本日に入って数十回は聞いた台詞が、俺にまた掛けられて、ぼんやりとしていた俺を叩き起こした。

この若いじいさんが、呆けたフリをしているのは知っているが、その理由までは知らない。何が楽しくて、さっきから同じ事を何べんも聞くか知らないが、覚えているだけでもう四十回は言われただろう。
その長躯を屈めるようにして、じいさんは白髪の混じった栗色の髪を、自分の指に巻きつけて、手悪戯をしながら、また俺に聞く。
答えは最初一回一回答えていた、だが、まともに数えて三十回を越えた辺りから、自分でも何を言っているか解らなくなってきたので、今は三度に一度答える程度にしている。
呆けてはいないというのに、何が楽しいのか。何時か諦めるだろうと思って、今までこうしているが、全く諦める気配は無い。

「今日は何の日だったかのう」

「二月十四日だ」

俺はまだ三度になっていないが、じいさんに最初から解りきった、決まった答えを出す。
理由は簡単だ、じいさんが俺の行く先に、便所の前に陣取って退こうとしないからだ。じいさんは俺の行く手を阻むようにして、俺にまた聞く。そして答えて、退く。
そのじいさんに答えを出すと、一度は退いてくれるので、その隙にそこを通る。腹が減って台所に行った時、じいさんはまたやっていたので、その時に同じ手段を取った。
別に抵抗される事は無い、だが、決まった答えを出すその瞬間まで、そこにびたりと張り付いて退かない。一体なんなんだ。

「今日は何の日だったかのう」

口を半開きにして、半分ズレた眼鏡をそのままに、焦点のあまり合っていないような目で、また言う。
本当にわざとだと解っているというのに、此処まで本気で呆けた表情で、呆けた事を言われると、本当に頭がどうにかなってしまっているのかと思う時がある。
それに一々ではないが、答えを出しているあたり、俺も相当末期なのではないかと思うが、他人からの主観など、俺の思考から遠く外れた場所にあるため、考えない。
若じいさんは、俺の顔を大きく覗き込むようにして、また呆けた表情と、呆けた声で聞く。当然の如く、俺は答えない。

「今日は何日だったかのう」

いい加減このパターンに本人も気がついているらしく、『今日は何日だったかのう』のピッチも上がっていて、俺が質問を返さなければならいな回数も増えた。
別に、答えなくても良いのでは?それに気が付いたのは、三十五回目の『今日は何日だったかのう』に答えた時であって、答えないようにしようと考えた瞬間、それを見透かしたように、また聞かれる羽目になる。
ペースを乱すと、余計に自分の首を絞める事になるので、適当に対応する。一種の作業になってきたそれは、数十年前からやっているような、そんな感覚になり、そういえば自分の仕事は大体そんな感じだった事を思い出す。
じいさんは今度は俺の鼻先三寸に顔を寄せると、瓶底眼鏡が透けて見える程近寄って、ある程度正気な目を向けてくる。

「今日は何日だったかのう」

「二月十四日だ」

退かない。

じいさんは俺の前から一向にと退こうとせず、俺の前に体を丸めたままの、見るからに背中に悪そうな体勢のまま、石の様に全く動かなくなった。
押してみる、退かない、引いてみる、動かない、息を吹きかける、反応無し。俺からの行動に対して、なんの反応も無いため、相手は大分本気になっているらしい。
いい加減喧嘩を売られているのではないかと、そんな気分になってこないこともないが、瓶底眼鏡から覗く、青すぎる目玉が俺を見て、そうではない、本当は解っているんだろ? と、言っている。
何を解っているか、それは俺自身解っている、今日最も俺が目を逸らしたい出来事であって、最も危険で命に関わる死活問題である、アレだ。

「今日は何日だったかのう」

いい加減、観念しろ。無言で強く握られる手が、軋む度に、そう言われる気がする。
怪我はしたくない。

「今日は……バレンタインデーだ」

「そうじゃよ、ほれ。
もっと早くに認めておれば、もっとラクだったものを」

口に放り込まれたのは、小さめのチ□ルチョコ。
たしか駅前のコンビニに、三個入り三百五十円で、限定苺味のヤツが売っていたが、それが限定苺なのか、普通の苺なのか、口に入れられたそれは全く見当もつかない。
さっきまで明らかに正気でなかったじいさんは、俺がチョコレートを舐めているのを確認すると、にたりと笑って、もう一つを自分の口に入れると、ボリボリと咀嚼し始める。

「それから、今日はその記念日を作った男の、命日でもあるがのう」

命日おめでとう!
あまりにもアレな台詞を言うと、二つ目のチョコレートを、また自分の口に入れて、ボリボリと始める。

この若く、ひねくねたじいさんは、その後も俺の鼻先三寸から全く動こうとはしなかった。


今日が厄日になる、それは確定していたが、俺がこの時この日を口に出して認めたからだとは、俺は死んでも信じたくない。
数時間に渡って付き纏われ、只管同じ事を連呼され、それに決まった答えを求められ続ければ別だろうが。
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コメント 1

陽

ダレカさんあああああありがとうございます///
チロルチョコwww
by (2009-02-14 20:14) 

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