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バレンタインSS:ぐるぐるぐるぐる [小ネタ]

という訳で予告どおりにバレンタインだよ!!!
一人書けたらいいなとか、そんな事いっちやったけど、今日早速滾る本能に任せて二人書いたぁぁぁぁぁぁ!!
頭の中でうちのやつらが、バレンタインに関して騒ぎまくって、五月蝿い件に関して((
発言が危ない?頭の中の小人さんが危ない? しるかそんなもの!ww
では、改めまして一人目、貞子さんのバレンタインデー!!!


バレンタインSS


登場キャラ:おじさん 三悪趣の者

バレンタイン度:★★☆☆☆
精神有害度:★★☆☆☆
(貞子さん、うっぱい乗っけてます)
(あからさまに大変な事を暗示)
(おじさんの安否はご想像にお任せします)











今日は厄日になる。

それは街に聞き慣れた歌が溢れ、チョコレートが捨て値としか思えない様な値段で叩き売られ、一部の男が浮き足立ったり、殺気立ったりする事で解る。
どれもかしこも俺には程遠い、否、程遠かった物だったが、おそらく今年はそうとは言い切れない、逃げ切れないだろう。
チョコレートのような、強烈に甘い物は苦手ではあるが食べられないほど嫌いな訳では無い。だが、問題はそれ以外とそれのおまけ、渡してくる相手の全てだ。
必ず自分の所に来る等と、随分と我ながら自惚れている、そう思いもするが、これは自惚れというより、鼠が遠い天災を予知するような、危機察知に近い物がある。

それにしても。
最も恐ろしい事は、俺がこの全てに慣れて、諦めて抵抗を止めてしまった事だ。

早くも来た、一人、何かが這うような、そんな音と地獄の底から響く様な、そんな呻き声を上げて、それはテレビを見て後ろを向いた俺の、その背後から近づいて来る。
呻き声はけして、けたたましい物ではないが、生理的に拒否反応を示させるような、ガラスとガラスを擦り合わせた時のような、そんな音に似たニュアンスを持つ。
嫌に白く、長く尖った爪が生えた腕が、びたりと俺の肩に張り付く。髪で顔の解らないそれの、紫にらんらんと光る目と俺の目がぶつかった。

「今日は随分とご機嫌だな」

「ああ、外がやかましいからね。アンタで憂さ晴らしさ」

人外が、先程の得体の知れなさとは打って変わって、とても流暢に俺の言葉に言葉を返す。もう驚かない、凄く慣れてしまっている。
俺はテレビを消すと、その人外に向き合って、含み笑いの様な物をしているらしい、その目を見て口の端を上げた。
座っていたソファーを這う様にして、人外は俺と同じ目線になると、俺の隣に座って目を光らせる。

一瞬で聞けば、その声と言葉に苛立ちを感じるかもしれないが、慣れた耳で聞けば、実際はそう怒ってはいないらしい。

ただ、例に漏れず退屈なのだ、この人外は。

白い手を首に回されると、一瞬思って少し体に力が篭ったが、人外の白い手は自分の白く薄い服から零れそうな胸を持つと、俺の肩に乗せて息を吐いた。
思い切り密着した、柔らかい胸の感触と、それと共に密着した腰に感じる感触が、腕だけでなく、太腿まで絡められた事を俺に教える。

「俺で遊ぶのは楽しいか?」

「ああ、楽しいね。
夜になったら、かわいい弟共が来て、お前を一呑みにしちまうだろうからねぇ、今の内にこうして……独り占めするんだよ」

「一呑みか、いっそ咀嚼しないでくれた方が、俺にとっては都合が良いんだが」

それに返って来たのは、空気を捻って千切ったような、そんな小さいがしかと聞こえる笑い声。会話は元より成立しない。期待もしていない。

此処で思う、一体その妙な声は何処から出ているのだろうか。同居人の中には、多数そういった声を出せる者がいるが、声でもない声を出せるのはこれが始めてだ。
人が作った人造生命体。だから声帯の作りも違う。それは解った、あたりえの事だ。だが、気になる物は気になる。

視線が自然と喉に移っていたか、人外はもう一度喉を鳴らすと、自分で自分の喉を掴んだ。
この距離から見ると、白い首に爪が食い込んでいる様が、ありありと見て取れる。

「どうしたね? そんなにこれが気になるかい?」

「随分と妙な声を出す喉だからな、潰せばどんな音が出るのやら」

脅かす様に、少し目を細めて、口の端を上げて言ってみる。同居人の真似だ。
効果が無いのは知っているが、言ってしまうのは、俺があまり人らしい性分ではないのと、あまりに人外に囲まれて行き過ぎたせいか。
少し前までだったなら、此処は適当に聞き流すだけで終わっていたかもしれないが、こんな軽口が出るようになったのは、軽口でも言ってないと正気を失いかねないからだろう。

相手は俺の意味の無い言葉を、吟味するように噛み締めると、仕事から帰った後、整髪料だけ適当に落として下に下ろした髪を、ぐしゃぐしゃに掻き混ぜた。頭皮に爪が当たって痛い気がする。

「なら一つ教えてやろうかね、この喉にはお前と同じ、喉仏があるんだよ」

改めて、手を退かして見せられた喉は、白く滑らかな線を描いているだけで、自分と同じ隆起する物は全く見えない。
それを気が付いているのだろう、人外は俺の手を取ると、自分の喉に俺の掌を押し付けるような形にして、また喉を鳴らす。先程とはまた違う、妙な音が鳴った。
片腕で俺にしがみつき、片足で体のバランスを取る。遂にはもう片方の足まで回されて、俺は完全に抱きつかれた形になる。

「ほら、握ってごらんよ。触らなきゃ、わからないだろう?」

返事は最初から望まれていない、握らなければ、このまま何時間でも開放されないだろう。
掌に、何かがぐるりと動く様な、そんな妄想から来た感覚がして、それを確かに感じるために指を首に当て、感覚を頼りに動く物を探す。

確かにそれはあった、男の物と同じ、もっと喉の深い部分にあったが、それは確かにあった。

手を放した時、人外はその無い表情で俺を見ると、少し驚いたように言う。
お前も、そんな顔をするのか。

「バカだねぇ、折角逃がしてやろうとしてたのに」

その言葉の意味は、妙に直ぐ解った。
言われてから気が付くのも変だが、その驚いたような、嘲るような妙な雰囲気が、その意味を俺に解らせる。

「喉を握らせる、か?」

「そうさ……そうだよ、このバカな子が」

人外は俺の肩を強く掴むと、細い腕から想像付かないような力で、俺を横倒しにする形で押し倒すと、俺の喉に長い爪を食い込ませた。
食い込む爪の感触が、俺の最後の脱出のチャンスを奪われた事を、むず痒いような痛みを持って、体に教えている。

喉を握らせる。喉を握られる。

「くれてやったもんは、今度から手放すなって話だよ」

今度は手に握らなくても、その喉がぐるりと蠢いたのが、なぜだか解った。


命を握らされた。そして、今握られている。

だが、俺自身。
さっき命を握った時、自分自身で気が付いて手を放したか、無知なまま手を放したか、明確に解らないままだった。

これからも、多分。
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