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企画:ぷりーずぷりーすあいうぉんでゅー! [拉致]

明日は文化祭、自分も全力を尽くさねば!
某有名劇団の10周年迎えたアレの劇の中入りに『悪役死亡大全』をやるのは、けしからんと思うんだ。(雰囲気的な意味で
因みに、自分もこの演目でフ/リ/ー/ザ/様とデ/ィ/ア/ボ/ロやるんですが、ええんか、このチョイスは、解る人しか解らない上に、女にやらせて良いの?


コチラは、定晴さんのみ、お持ち帰り、転載できます。

童話企画
青色の火の中に(+0.5)③

登場人物:泳楽さん 名無し(凄く少し)

背後に感じる熱風が頬を焦がす。

昔々度:★☆☆☆☆
精神有害度:★★★★☆
(泳楽さん、酷い目にあってまっす)
(少し、小指の先ほど残酷)
(前回ウッカリ、お後はって言っちゃった)








最後に教会に行ったあの日から、泳楽はあの刺青人形の情報を掻き集める手を一先ず止めて、追ってその下賎な行動原理の分析を少しばかり始めました。

勿論本業であるマッチ売りもしています、何か一つの事に熱中して他が見えなくなって、自分の利益を取り逃がす程、泳楽は暇人ではありません、まあ、趣味に生きるような人間に見えます、でも彼は案外思慮深いのです。
前回街頭に立った時は、新作の売れ行きも上々で、なんだか自分の貯金総額を考えると小さい家の一軒でも建てられそうな気がします、贅沢税が無かったらの話ですが。
その時にあの時の赤い髪の子供を見ました、目には痛々しく包帯の代わりの茶色く黄ばんだ不潔な布を巻いて、その布にはまだ血がじわりじわりと滲んでいて、かなり深く突き刺された事が見て取れました。
でも、そんな赤毛の子供も、泳楽が彼に近付いてみようかと考える間に、身振りの良さそうな男性に連れられて行きました、どうやら、商売の方法を変えたみたいです。
雪にぽつりぽつりと足跡を残しながら、その小さな体に手を回されて、ビクビクと怯えるような動作をしながら、しきりに自分の目があった部分を引っ掻いています、どうやら、あの後ロクな処置をしないまま傷を放っておいたらしいです。

泳楽はそんな光景を見ながら、結局それを止める事はしませんでした、あの時あった赤毛の少年の闘志みたいなものがまだ彼に残っていれば、まあ、仏心を出して助けてやらない事も無かったのですが、今の彼は抜け殻のようで、まるで面白くありません。

そして現在、現在自分が見られているとも知らない彼を、泳楽はそこだけ切り抜いたように観察しています。
現在地は二番街、三番街程ではありませんが、基本的に宜しくない地域で、まあ犯罪と言っても、指輪を指ごと盗られる程度の可愛いものです。

あ、これは断じてストーカーではありません、ストーカーとは法律が先にあってこそ発生するもので、現在この国にはそんな法律無いため、ストーカーではありません、断じて、大切な事なので二回言いました。

「んー、今日も寒そうでありますなぁ、見てるこっちが冷えるであります」

泳楽はぶるっと体を冷気に震わせると、持参してきた湯沸し機で煎れたコーヒーを遠慮無く啜ると、この寒空の下だというのに靴も履かずに外を歩いている刺青人形に、苦笑いのようなものを向けます。

そんな泳楽に気が付かないまま、刺青人形はここいらでは割と大きなバーの裏口にある、大きなゴミ箱をがさがさと、実際は音を立てる事無く漁っています。
勿論、荒らすだけ荒らして帰るだなんて、そんな愚かな事はしません、そんな事してしまえばバーの主人がゴミ箱に罠を張って、自分達を捕まえようとしますから。
ともあれ引きずり出した生ゴミの中から、刺青人形は何かの肉片の様なものと、カビたサンドイッチ、魚の切り身、そんな物を引っ張り出すと、また重そうにそのゴミ袋をゴミ箱に突っ込みました。
一時は結び目が解けず、一瞬切ってしまうのではないかと思われましたが、彼は案外器用らしく、その辺は何か道具の様なものを取り出した瞬間、するすると結び目を解いてしまいました。

今回の収穫はイマイチです、どうやらバーの方が大繁盛だったらしく、客に出せなくなった食材や料理が出なかった訳で、その事は商売をする側としては最高ですが、乞食としては最低です。

そういえば、泳楽もこの国のエロが解禁されたら、その時は商売あがったりです、今の勢いで解禁されたらあっというまに国にエロ絵職人が溢れそうです、需要と供給ってやつです。
現在の職に未練があるわけではありませんし、そうなった時はまた別の立ち回り方をして、それなりに生き残る気ではいますが、そんなホイホイと職を変えるのは面倒な物です。

「おおっと、ちょっぴり感情移入しちゃったでありますっ。
それに…解禁されたなら、合法で色々とエロエロとできる訳であります、それなら存在にモザイクかかる位キャッキャウフフな物を……キャッ」

いや、何処に感情移入するべき所があったかは知りませんが、泳楽は更なる猥褻物の製作を妄想して、一人盛り上がっています、そっとしておきましょう。
刺青人形は普段だったら此処で全て賄える筈だった食事を、今回に限っては無駄に遠くまで赴いて取りに行かなければならなくなってしまい、刺青だらけの裸足の足を進めました。
一方泳楽はぐねぐねダンスをしています、いえいえ本人は踊っているつもりなさげですが、ハタから見ればそんな感じで、屋根の上でぐねぐね踊る人が他の物体があるのですから、とんだ不気味映像です。
そうこうすると、どんどんと刺青人形は離れて行きます、彼自身も体の熱を逃がしたくないせいか、かなり足早に歩いていってしまいます。

普通なら追いつく事に苦労しそうな速さと、人目に付かない為に使っているらしい刺青人形の通る路地のせいで、追跡は難しそうですか、泳楽はそれをわけも無くひょうひょいと追いかけて行きます。
まるでその様子は、空を飛んでいるように見える上、案外簡単そうに見えないでもないのですが、屋根の上は雪が積もっていて、油断すれば雪と共に地面にまっ逆さま、生きていても骨折確実です。

ところが、泳楽がある程度進んだ刺青人形に追いつくと、刺青人形は一瞬立ち止まった後、弾かれたように元来た道を逆走し始めたのです。

「突然何ごとでありますか!?」

一瞬面食らった泳楽は、刺青人形が見ていた方を自分も見て、何があったかを確信しました、警察です、何かの事件でもあったのでしょうか、いいえ、この数名の警察官達は明らかに刺青人形を追っています。
おそらく、この前ドルミン神父と話したように、何処ぞの金持ちが彼を捕まえようとしているのでしょう、この調子なら、乱暴にしても構わないと言った風に、警察官達は警棒を振りかざすと、赤色の波になって路地に押し寄せます。

泳楽もそれを追いました、あの刺青人形が捕まってしまえば楽しい遊びもお終いです、何より自分が折角遊ぶ為の下ごしらえをしていたというのに、それを邪魔するとは随分ヤボな人間がいたものです。

だからといって、あの赤い波の前に踊り出れば、自分も無事では済みません、あの刺青人形がショーケース送りなら、自分はブタ箱の後、仰向けで断頭台です。
外套を翻し、そこから覗いた緑色の着物を北風に靡かせて、泳楽は屋根を蹴りました、目指すものは待ってくれません、なによりあの刺青人形は昨日の雪に足を盗られ、その勝手が上手く掴めていないらしく、危なく追いつかれそうなのです。

漫画ならこういった警察は、皆沿ってバカでノロマで、主人公達に出し抜かれて笑い物になるのが相場なんですが、バカかどうかは解りませんが、この集団は思いのほか足が早いです。
やっと刺青人形に追いついた泳楽は、走りながら器用に双眼鏡を覗くと、その様子を見ました、人形に内蔵があるのかどうかは解りませんが、凍るような冷気が肺に容赦無く入り込んでいるらしく、荒い息をつきながらの逃亡です。
この様子では追いつかれてしまうのではないでしょうか、いや、逃げ切る事は可能でしょうが、多分あの人形の丸一日を潰す事になりかねません、警察はしつこいのが特徴ってものです。

次の瞬間、泳楽は懐から糸束を取り出すと、さっきと違う方向へと走り出しました、鉄弦とかそんな物騒な物でなく、ただの糸、なんとなく持っていた手芸用です。
足を急がせて手にとったのは、さっきの湯沸し機のある場所でした、まあこんな屋根の上を見る人間も居なければ、他に登ってくるヤツも居ないだろうと、設置したままにしていたのですが、今回用事があるのはそれそのものでなく、一緒にしておいた湯、正確には水です。
泳楽は自分の判断、置いて平気だろうという考えを少し後悔しつつ、元の道無き道を走ります、今度は渾身の力を込めて、跳ぶのでなく、飛ぶように。

そして、追う赤色の波は今の所、刺青人形を最短距離で追っている、だからこそいくら雪に足を盗られているとはいえ、地理に慣れた刺青人形を追い詰める事が出来ているのか。
だが、最短距離で走っているという事は、その分何処を如何走ってくるかが読み易いという事で、泳楽はその事を利用しようと、赤色の波から自分の姿が見えないギリギリに立った。

やるべき事は簡単、実に簡単。
糸束をもう冷めた水に漬して、糸を三重位に束ねて、道の端と端に結んで張る。



読み通り、作戦は成功した。

「あらら、泳楽やりすぎちゃったでありまっす♪
うっかりうっかり、しっぱいしっぱい☆」

失敗? 大成功です。
泳楽が仕掛けた罠は、勢いを増したまま走る赤い波達の足を切り飛ばし、今そこでは完全に両足を失った者から、皮一枚で繋がってる故に苦しむ者、泥に塗れた雪に血が滲み、今此処は紅蓮の地獄になりました。
仕掛けは至極簡単です、水を吸った糸を伸ばして張る事で、冷気に晒された水分は一瞬で固まり、完全に繊維の隅まで染み込んでいた水分が固まって、尚且つ繊維部分が多く撓る故に、硬く、歪まず、折れず、あの糸は即席のギロチンと化したのです。

自分の成果を遠目からしっかりと目撃すると、泳楽は逸れた刺青人形を探す事にしました、随分時間が開きましたから、探すのには苦労しそうです。
しかし、その先の道を泳楽が幾ら探しても、あの特徴的な刺青人形は見つかりません、今は自分の仕掛けたトラップの成果に満足しているので、金色の美味しい飴玉でも恵んであげても良いと思っていたのに。

結局この日は会えないまま、泳楽は家路に着く事になるのですが……。












「何ごとでありますか……?」

徐々に夜が深け始める頃、昨日と同じぼたん雪が容赦無く横殴りの風と共に訪れそうな、そんな天気の中。
自分の住んでいる借家に、大量の警察と野次馬、その野次馬の中央に煌々と焚かれる炎の光が、辺りを真昼の様に照らしていました。

何を焚いているのでしょう、何が起こったのでしょう、続々と建物に赤い波が入っては何かを口々に騒ぎ、地面に散らばる紙片のような物を火の中にくべて。
その時、丁度泳楽の部屋のある場所の窓から、何か大きな物が大きな音を立てて投げ出されました。

……泳楽の机です。

机は瞬く間に材木となり、炎を大きくするための燃料にされます、泳楽が私腹を肥やしたあのいかがわしい絵の原画や、多用した芋判も共に。

遂に年貢の納め時、誰かが泳楽の事を密告したのです。


でもその時、泳楽の頭の中には全てが火に消えた事より、ずっと正気を失うような、狂気の沙汰としか思えないような考えが過ぎりました。
今渦巻く考えは、普段なら下らない妄想だと、そう一笑して流すような物だったでしょう、でもそれは今彼の中でとても確かな物として、パズルのピースを合わせるようにカチリと嵌ったのです。

泳楽は走りました、音も無く、雪雲を裂き、大輪の赤い花を背に、三番街へ。



この事を密告したのは、あの刺青人形だと。

あの刺青人形は、ずっと自分の存在に気がついたまま、道化を演じていたのだと。

何時かこの時が来るまで、泳楽が確実な罪を負い、その作り物の舌の上に乗る時を。




お後は次の、お楽しみ。

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