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企画:タイツの海に溺れたい。 [拉致]

一部地域ではグラコロバーガーは売ってないと言われたんですが、まさか自分の住んでいるところが『一部地域』だとは夢にも思いませんでした;;



コチラは、定晴さんのみ、お持ち帰り、転載できます。

童話企画
青色の火の中に(+0.5)②

登場人物:泳楽さん 名無し

前回の続きだから、当然の如く短い。

昔々度:★☆☆☆☆
精神有害度:★★★★☆
(超絶短い、本気でSS)
(超シリアス、今後もシリアス)
(エロっぽいものもちょっぴり)








三番街、そこはあまりにも荒廃としすぎて人が住める状況ではなく、此処の町の人間でも、そう進んで足を踏み込むところではありません。
人が住まない様になった理由は、多すぎて数え切れませんが、中でも一番酷い事は此処に昔マッチ工場があって、工場が無くなった後も、そのマッチの毒がまだ大地に残って人を蝕むからです。
そんな場所に住みたがるのは、元死刑囚の脱獄犯や、存在が許されない浮浪児、忌まわしい病に犯された人間、兎に角この街で三番街と言われたら、そこは此の世の地獄なのです。
ですが木の葉を隠すなら森の中、それだけ不浄な物が寄り集まっているなら、ちょっとやそっと汚れが多くなっても誰も気にしません、此処はそういった人間の絶好の隠れ場所でもあるのです。


泳楽も、此処の道をこんな真夜中に通っていれば、かれこれ十人は追いはぎとか、阿片で頭がパッパラパーになった人間とか、そんな者達に区別無く絡まれたりしましたが、まあ、此処では説明できない方法で退けて、話に聞いた場所へと向いました。
目指す所は、一見するとただのボロ小屋に見えるらしいのですが、なんでもまだ幼い浮浪児の集会場みたいな所で、あの目当ての人物はそこのリーダーだかと聞きます。

あんなに面白い人間、人形を見たことは、泳楽に久しくありませんでした、なにせ人形が生きているのですから、絶対にありえないことです、ありえないということは無いと言う事を、泳楽自身もよく知っているつもりですが、それでも常軌を逸した事である事は確かです。
何よりあのドロリと溶けたような、実に汚らわしい笑い方、あんなに汚い生き物もそう見たことありません、自分の故郷にいる知り合いなら、即彼を捕まえて解剖したがるんじゃないでしょうか。

そしてやっと見つけた目的地は、そこだけ切り取ったかのように腐臭を纏いつかせ、腐った生ゴミの臭いが鼻を突く上、足元はベチャベチャとした茶色の泥でぬかるんで、ぬかるんだ泥に毒が混ざって、灰色と緑色に染まった部分がありました。
正に此処は汚らわしい者どもの巣窟、といったようで、あまりにも絵に描いたような有り様で、泳楽は内心失笑すると、小屋の中へ聞き耳を立てました。
中には誰か居る様です、一人、二人、いいえ、声を出しているのは二人だけですが、中には十一人程の子供が息を殺して、まるで死後硬直をした死体の様に硬く蹲っているようです。

泳楽は立て付けが最悪な木のドアの節穴に、自分の目を通しました、自分の予想は大体当たっていたみたいです、小屋の中にはそんなに広くないというのに、服と呼べないようなボロ布を着て、この寒空で素足を剥き出しにした、大量の子供が犇めきあっています。



居ました、あの紫色の髪をした子供です、今は彼もまたどこかの国の民族衣装みたいな物を着ていますが、服から覗く刺青がなにより証拠です。
ただ、今この小屋の中は緊迫した雰囲気に包まれており、その中心に居るのが彼で、もう一人が赤毛の子供、泳楽は暫く彼らを見て、あの赤毛の子供は市場で自分の財布をスった子供だと言う事に気が付きました。

赤毛の子供はあの子供より、二~三歳は年上に見えるのですが、立場は下のようで、またあの薄ら笑いを浮かべ、自分の紫の髪を指に絡め、扇子で顔を隠す彼に、怒りを持って詰め寄っています。
話は子供らしく順序がめちゃくちゃで、泳楽は頭で理解するのにてこずりましたが、総合するなら、どうやらあの赤毛の子供の妹を、あの相手と目すら合わせる様子の無い彼が、売春宿に売り飛ばしたらしいのです。
更に話から察するに、あの紫髪の子供、刺青人形は元々はあの赤毛の子供がスリをする金と引き換えに、妹の身の保身を約束していたらしいのですが、刺青人形はその約束を破った、という事です。

詰め寄る赤毛の子供は、肺に侵入してくる冷気に苦しみながら、妹を何処へやったのかを、どうしてこんな事をしたのか、それを聞いています。
その剣幕は今にも相手を刺し殺しそうな、それでも刺青人形は顔を覆ったまま、酷い咳のような耳障りな笑い声を上げているだけ。

「ゲヒヒヒヒヒヒ、アンタ、何を言っているでやんすか?
あの健気で、実に可愛らしい妹さんは、病身の体を鞭打って、アンタの助けになりたいって言って、自ら身売りしたんでゲスよ?
ゲヒッ、あっしは、何もしてないでやんす、無実でやんすよ、ゲヒヒヒヒヒッ」

嫌に緩慢で気だるげな物言いは、息切れしてテンポを失った言葉よりも耳障りで、黒板を削る音の様な、一種の生理的嫌悪感を呼び覚ますような、そんな喋り方と笑い方です。
それでも赤毛の子供は引き下がりません、それならせめて妹が何処へ行ったかを教えろと、必至に、半狂乱になって金切り声を上げます。

「だぁめ、でゲス。
場所を教えたら、取り返しに行くでげしょう?
そんなことされたら、あっしら全員アンタのせいで首括ることになっちまうでやんす
アンタは恩のあるあっしらを殺して、自分の欲を、満足させたいんでゲスが?」

あくまで緩慢で、言葉は諂って、言葉そのものには棘はありません、だが的確にあの赤毛の子供のトラウマを抉るらしく、赤毛の子供はもうすでに肩を震わせています。
扇子から覗いた顔からは、またあのドロリとした笑い顔が覗いていて、泳楽は扉の節からじゃなくて、もっと接近してその顔が見たいと思います。
もっと近付いて、その顔を別の、泣き顔とかに変えてやりたい、そんな事を珍しく考えました。

「アンタとあっし、約束したでげしょう? 一番最初に。
等価交換、金と引き換えだって、ゲヒヒッ、今のアンタに何があるんでゲスか?
勿論、金は無い、コネも無い、何も無い、健康な体?そんな物、ガキのあっしらには意味が無い。
アンタが一生掛かって稼ぐ金より、あのお嬢ちゃんの手入れ金の方が高かったでやんす」

その時、どうやらあの震えは、怒りから来ていた物らしかった赤毛の子供が、刺青人形の胸倉を掴んで声を張ります、刺青人形の足はぶらんと浮いて、このまま殴られることが当たり前です。
こんな小さな子供が、このグループを纏めていたのが不思議だったのです、いつこうなっても可笑しくない筈なのに、等の刺青人形が今正にそれを体現しています。

ところが、その途端に赤毛の子供の体が、明らかに何か異常が起こったように、ビクビクと痙攣し始め、尿を漏らして腐った床を濡らしました。

「それとも…アンタがあの子の身代わりになるってんですかい……?
出来ねぇって事は知ってるでげしょ、アンタは男の前に足開けるってんですかい?
一生膿み腐る傷がそんなに欲しいなら、あっしがくれてやってもいいんでゲスよ、アンタみたいなクズなんかより、あのバカなお嬢ちゃんの方がずーっと良い稼ぎをしてくれやすから……!」

赤毛の子供の体が崩れ落ちて、刺青人形は地に足を付け直すと、扇子を畳んで自分の人差し指を舐めました、人差し指は血となにかぬとぬととした液体で、テラテラと光っています。
対する無残に崩れ落ちた子供は、左目にぽっかりと大穴を開けて、中から大量の血液を流したまま、自分の汚物に顔を漬しています、このままでは感染症は免れないでしょう。
刺青人形は、部屋の端で自分の仲間が蹂躙されたというのに、何もせずに膝を抱えて丸まっていた集団に、顎で何か指示をすると、その集団はわらわらと亡者の様に赤毛の子供へ群がり、小屋の奥へと連れてゆきました。

そして、刺青人形自身は、泳楽の居る方向へと歩いて来たのです。



「ま、あっしには最後の……最終手段がいるんでゲスがね」



泳楽はその場は一旦引く事にしました、小屋の屋根の上に飛び乗ると、その小屋の扉を開けて、刺青人形が何処かへ歩いて行きます。
また何処かへ稼ぎに行くのでしょうか、前回は殺しでしたが、今回もそうなのでしょうか、その事はわかりませんが、兎に角あの刺青人形は丸腰で躊躇い無く人を殺せる、そんな人種だということは解りました。
少しだけ長い紫の後ろ髪を、淀んだ風に靡かせて、刺青人形はまた歩いて行きます、その様子からすると、自分がこうやって誰かに観察されているなんて知る由も無いのでしょう。

泳楽は、この人形にオモチャとして以外の興味を持ちました、何故なら、彼は自分と同じく『出来上がっている』人間だと、あの一連の流れで確信したからです。

「これは……直接遊ぶには、準備が必要そうでありますな……」

そう呟いて、自分の顎に手を当てて首を捻ると、泳楽は一先ず自宅へ帰ることにしました、暫くマッチ売りは休業です、そんな事より調べなければならない事が増えましたから。
教会へ行く頻度も増えそうです、あの教会の神父は、頭は空に見えて意外と情報に通じています。

泳楽は、あの生意気な、壊れかかった人形を、完膚なきまでに叩き壊したくなったのです。

「面白い物、見つけたと思ってたらとんでもない、あのガラクタは本物の宝石、花火でありますっ」

知らず知らずの内に乾いていた唇を、舌でなぞって解き、唇の表面の皮がパキパキとした感覚を残します。
それを言った顔は、笑っていませんでした。


こうして此処に、互いに一度は顔をあわせておきながら、片や観察者、片やその存在すら知らず、そんな奇妙で歪な関係が出来上がったのです。


お後は次の、お楽しみ。

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コメント 1

定晴

あーもう、二人とも大好きだ(
ダッダレカ殿・・・!!解剖って!解剖って!!←
by 定晴 (2008-11-12 19:15) 

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