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小説:地の果ては孤独 [小説]

地の果ては孤独

登場人物:0012 aaaaa 黄川坂の子(少し) ??? (極微

ドロドロ度:★★★★☆
精神有害度:★★☆☆☆
(二人は超不毛なお話をしています)
(スカッ、サワヤカッ、をお求めの方はお帰りください)


足元に転がるのは、拘束服を纏い、鎖を巻かれ、全身を拘束された男。
頭に被せられたマスクから、生物の残り香の様に零れているのは、此処に住まう住人には馴染みが深い灰色の髪。
彼、或いは彼女が足元に転がる『それ』に、騎馬用として作られた鞭を力の限り振り下ろす、空気が切り裂かれて消える音、ただ痛みだけを与える事を目的にした鈍い音。
白い頑丈な繊維の下、黒光りするエナメル、それを貫通して背に伝わる痛みに、足元に転がる『それ』は狂喜して頭を振りたくる。
その頭に無慈悲に振り下ろされるのは、彼、或いは彼女の足。
鞭の痛みに喜ぶそれと同じ、黒光りするブーツが灰色の髪が漏れた頭を、地に激しく打ち付けて罵声を浴びせかける。
ヒスリックな声、子供の声にするにも歪な声、言葉に息が続かずに何度も何度も言葉の代わりの鞭が飛んで、その度悲鳴に似た金切り声は酷く。
何かが砕ける、じわりと血が地面に滲んで彼、或いは彼女は、追い討ちをかける様に更に足を振り下ろし、踏み躙って、喜びともつかない高笑い。
一頻り笑い終えると彼、或いは彼女は近くに置いてあった質素な椅子に腰を降ろし、鞭を振り下ろし、それを砕くと言う一方的な破壊行為を止めた。
砕かれたそれは、もうピクリとも動かない。

荒い息をつき、自分自身の空色の髪を無造作に掴むと、そのままぐしゃぐしゃと掻き混ぜて、後一人居る目障りなそれに目を向けた。
目障りな『それ』が、まるで白雉のした事を咎めるような、呆れ果てた様な言葉を、先程までそれに罵声を浴びせていた者に与える。

「君は本当に醜いね」

仮面をつけた神の子は、汚らしい液体を出した『それ』に目を向けると、それの汚らしさに吐き気を催して、呪物を見る目をして眉を潜めた。
言葉は間違いなく『それ』を作った、『それ』よりも醜い彼、或いは彼女に向けられている。
神の子は、意味をなさなくなった言葉を延々と紡いで、感情の発露に合わせて叫び続けた彼、或いは彼女の口を見て、その口はなんと無意味な物かと絶望する。
気味が悪い二つの歪、あってはならない物、己と言う名の神あって、それでなおも届かない異常な。
醜い、なんと醜い。
吐き気に混じって、此処で吸った全てを吐き出せれば良い物を、それは出来ない。

いまだ荒い息をつき続ける彼、或いは彼女は、その言葉を聞いて激怒しようと立ち上がろうとしたが、めまいを覚えてまた崩れ落ちるように座る。

この醜い子供は何を言っている、立ち上がれるなら今直ぐに八つ裂きにしてやるものを、憎憎しい事に立ち上がる事も出来ない。
この体はどうして此処まで脆いのか、管理リヴリーの体故に通常のリヴリーよりはマシだが、やはり子供の体だ、これだから子供の体には入りたくない。
手に持つ鞭を、思い切り叩きつけて、空気が鋭く裂かれる。
余りにも強く叩き付けたため、手をすり抜けて鞭は地に衝いた、ああなんと憎憎しい。
喉から搾り出した声は、何時もよりも望まない性に似ている、その事がこの子供を激しい憎悪へ駆り立てる。

「ハァ?
アンタ何言ってるのよ、アタシが醜いですって!?」

「君の容姿は認めるさ、でもね」

掠れて、幾分か彼、或いは彼女を元あるべき姿に見せる声が、疲れ切った喉から絞られ、醜い不協和音を奏でる。
悪魔が聞く天上の調とは、こう聞こえている物なのだろうか?
作り物の容姿、何者か正しき持ち主から剥ぎ取り、恰も己の物の様に立ち振る舞う、愚考。
容姿だけは美しい、醜くなった者を全て切り捨て、ただ美しい物だけを見詰め続けて全てを捨てた何か。
気味が悪い、なんと醜い。
死体のドレスの下には、どれだけの死を積み重ねてきたのやら。

神の子は、子供が座った椅子と同じ作りの椅子に自分自身も腰掛けて、声にならない悲鳴を上げている目の前のそれを嘲った。
常温で腐りきった部屋は、死臭に似た何かを含んで肌に纏わりつき、二人を更に不愉快にさせた。

このバカな肉の塊は何を言っている?
醜い、在り得ない、自分は美しいはずだ、それよりも目の前のこの卑しい子供は一体なんだ。
悠々と自分を挑発するように座って、まるで自分に八つ裂きにされる事を望んでいるような、それとも絶対の自信があっての行動か。
鞭を強く握りすぎて、利き手が痺れている事に気がつく。
痺れた手を庇うと、当たった指先に痺れが連動するように響いて、何ともいえない感覚が手を包む。
今時分の手は冷たいのか、温かいのか、それすら解らない。
兎に角この子供を如何にかしてしまいたい、この意味のない間違いを紡ぐ口を縫合して、頬を抑えて殴り、鼓膜を破りたい。

「心が醜いって言いたいの?
ハッ、そんな昭和のゴミみたいなセリフ、私には意味の無い事よ」

「それも違うさ、君の醜さは君の全てから来る物、君の醜さは他人と他人の間を腐らせる」

真実にすら目を向けようともしない、本当に堕落し切ってしまった彼、或いは彼女には、哀れみさえも浮ばない。
異端の物を何ゆえ愛せるだろうか、だが、それを見捨てるのは神の本意ではない。
それでも何もないのなら、何も変わりようがないのなら、彼、或いは彼女を滅ぼす事が必要となってしまう。
彼、或いは彼女の存在は、このままでは世界にとって必要でない。
なら、正しい流れに彼、或いは彼女を戻さなければならない。
それもきっと、彼、或いは彼女のためになる事だ、僕、或いは私の流れを受け入れる事は。

スツールの上に乗っていた水に二人が手を伸ばす、先に手が付いたのは神の子。
それに対して、子供はふんだくる様にして水を奪った、この自分に仇名す物にだけは、水一滴たりとも渡したくない。
等の神の子は、子供が触った水は飲みたくなかった。

何処までも理解不能、何故に自分が指摘されなければならないのだろうか、全く理解不能。
此処まで無鉄な自信が続くと、この神の子の脳を切り開いて中を確認したくなってくる、鞭を拾おうか。
この子供の前で、自分の頭をこの子供より低くするのは嫌だが、現在手持ちの武器はその鞭だけだ。
能力を使って取れば良い、だが、能力を使って武器を取れてば、自分の敗北を認めた様に感じて不愉快だ。

「アンタバカでしょ?
アタシが友達が欲しくてこんな性格してると思ってるの?
そんな訳無いじゃない、他人と群れるつもりだったら、もっと人にとって都合の良い人格になってるわよ」

「演技する、 の間違いじゃないかね?」

「あのねぇ、そんなだからアンタはおこちゃまなのよ。
演技なんてありえるはず無いでしょ? だってアタシは此処に一人、アタシは此処にしか居ないんだから、一人しか居ないアタシのどの部分を取っても偽者のハズ無いじゃない」

神の子は、哀れむように目を細めて、愚かな子供の目を見た、その目のは痛々しいまでに淀みなく、ただ澄み切っていた。
澄み切った水には、生き物は住むことが出来ない。
彼、或いは彼女の中に内包する水は、一転の曇りない死海、全てを拒絶して、生かす事すら出来ない何もない水。

僕、或いは私にはありえない。

「君は何時か独りぼっちになるよ、その時はきっと泣くのだよ」

もうダメだ、この子供と自分は分かり合えない。
あの愚かな神の名を語る子供は、自分の被った仮面と同じ様に真っ白に塗り潰されて、一見すれば人より高位の存在に見える。
でも本質は、人と違う物を受け入れようともしない、ただのハリボテ、虚像。

アタシにはアリエナイ。

「誰だって死ぬ時は一人よ、死ぬ時以上の孤独があるなら逆に拝ませて欲しい物ね」


振り返る時、もう愚かな神の子は居なかった。
ただ後に、何の意味もない、自己完結の塊でしかない言葉が残っては消えて。

それを聞いた物はただ一人、だが、それは聞いていないも同然。
そして全ては隠れて消えた、秒針の音に紛れて、二人が共通して嫌う『意味のない音』になる。


「なら僕、或いは私の、全ての破滅に君の破滅を置こうじゃないか」



地の果てで、時計の鐘だけが鳴った。
























『何を一人相撲をしているのやら』
地の果てで、時計を鳴らす何かが、呆れとも、哀れみともつかない息を吐いて消えた。

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