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敬老の日SS:まあいい、敬う? [小ネタ]

自分前回豪快な誤植をしていたらしくて、最初の説明書きの所
『登場人物:おじさん 双子』→『登場人物:おじさん 三つ子』になってましたよ、なにやってんの自分!
まったくコピペばっか使ってちゃダメって事の良い見本ですね、現在はしっかり直したので、かんべんしてやってください!
まあ、客引きの為に双子(弟)が、仕掛けた釣り針って事で勘弁してね!

今月は十五夜がありますが、新暦だと21日になってて、それだと満月じゃないんだとか。
よ…よかった、15日書き忘れてどうしようかと思ったら世界は優しかった。



敬老の日SS
うみぶたのはなたば

登場人物:おじさん 生生流転の子

ほのぼの:★★☆☆☆
精神有害度:★☆☆☆☆
(良くも悪くも何時も通りです)
(筆者はほのぼののつもりで書いてます)



うみぶたのはなたば



「おじさま、今日は私がけいろーなの」

玄関前、俺が仕事に行く間近に誰かに捕まる。
半分抱きつかれるような形で引きとめられた間合い零距離のまま、後ろを振り返ると、其処に居たのは蜂蜜色の髪が綺麗な少女。
彼女はこちらを見てにこにこと屈託の無い笑顔を俺に向ける、太陽の様な笑顔はなんだか見ているだけで栄養になりそうだ、俺葉緑素無いのに、それ以前に人間だ。
だが、そんな事より俺の気に止まったのは『けいろー』と言う言葉だ、やっぱり『敬老』の事なのだろうか、今の俺にとっては敬老と言う言葉は、彼の世の一丁目の地獄行き宣告と同じ意味だ。
つい二日前まで、気にも留めない言葉だったと言うのに、一昨日の出来事と昨晩の出来事が原因なのは日の目を見るより明らかだ。
若干朝からげんなりしてきた、だが足元の彼女はそんな憂鬱とは無縁なほどにっこにっこと……。

「お前達は毎日毎日元気だな、羨ましい」

純粋にそう思った、少し位その元気を分けて欲しいが、分けたら彼女は今の彼女で無くなってしまいそうで、そうなると少し嫌な気はするが。
『子供は無知で無欲でバカな方が良い、そしてバカな内に物を体験しておけ』何時か読んだ本の誰かの人生哲学だが、今はそれに同意出来る。
蜂蜜色の髪の少女は、文字通り目を深い金色にして、俺にまた抱きついた、おいおい、今は良いが家の中以外で見境無く他人に抱きつくなよ、最近変質者が多いんだから。

「そーなの、元気なの!」

うん、良い返事だ、願わくばそのまま敬老しないで部屋に戻ってくれ、そして大人しく留守番していてくれ。
退屈なのは良く解る、だが、ホントに、頼むからお願いします。
ああでも、お前は今の所俺をじいさんと呼ばないな、自分から俺をじいさんじゃないと判断しているのか、まだ吹き込まれていないだけか、それだけはそのままのお前で居てくれ。
なんで俺は仕事行く前にこんなに疲れてるんだよ……?

「元気なのは解ったから、留守番をしててくれって」

そう言うと目の前の少女の目の色にオレンジが混ざる、最近はこの白目の無い目に慣れてきたが、彼女の感情で色が変わる目は、最初見た時少し驚いた。
色が明るいなら、泣くって訳では無さそうだが、困っているらしい、多分俺に自分の『けいろー』を無視されそうなのを困っているんだろう。
それにしても一体誰から吹き込まれたんだ? あのバカ双子なら『敬老は相手の出会い頭に尻を叩く事』とか吹き込むだろうから、多分最初のあいつらか。

「違うってばぁ、今日は私がけいろーするばんだから、私けいろーするの」

敬老の順番、あいつ等本格的に俺にアレコレする気なのか、これは本当に一刻も早く敬老を止めさせないとまずそうだ。
今は別に嫌がらせで止まっているが、あいつ等の事だから命に関わる事をやられかねない。

「そうか、兎に角迷惑にならない程度にしてくれよ、頼むから」

そんな顔しないでくれ、女の涙は無視する自信があるが、子供の涙には弱いんだ、無視し辛い。
偽善とかなんとか言われそうだが、別にこれを誇るつもりは無い。
少女は人差し指同士をもじもじと擦って困った後、こっちを見てぴょこぴょ跳ねて誤解を解こうとがんばっている。
最初に言う、俺はロリコンでは無い。
かわいいな、ぬいぐるみ的可愛さが全身から滲み出ている、今ならじいさんと呼ばれても打算無しで無視出来るかもしれない。

「めいわくにはならないよっ、けいろーっていいことなんでしょ?」

いや、確かにその通りなんだが……何と言うか、お前の兄さん達が余計なマネしたせいで……、本当に悪い事した気分になるな、ちくしょう。
だがそれは確かな事だ、敬老は悪い意味ではない、たった一点俺は老と言う程の年齢ではない事が気になるが、今は無視しよう。

「まあ、そうだな……」

「なら平気なの、おじさま、しゃがんで、目をつぶって」

オレンジが混ざった目は直ぐに黄色に戻った、機嫌が直って良かったな。
目を瞑れか、瞑った後何か来そうで怖いが、此処で無視してもなぁ、瞑ってやろうじゃないか、もしも何か仕掛けてる奴が俺の考えを読んでいるなら言っておく。
この子に免じて瞑ってやるが、今回だけ特別だ、次は無いぞ。

「ん…ああ、解った」

そして目を瞑った、明け方の薄い陽光が視界から遮られて、まだ完全に覚醒しきっていないらしい意識が夜のまどろみを思い出す。
そのまましゃがみこむ、丁度少女と同じ目線だろうか、手前から何かの包み紙を破る音がして、甘い匂いが微かに漂う。

「はい、おじさま」

歯に何か硬い物が当たった、痛くは無く、そこからじわりと甘い味がする気がする。
俺はそれを咥えて口の中に入れた、苺の味、唇を割り開く様にして押し付けられたのは、甘酸っぱい大玉の飴玉だった。

「……ありがとうよ」

疑って、悪かったな。
そう言う前に、彼女の返事は返ってきてしまった、これだけは言いたかったというのに、俺自身の不甲斐無さに少し呆れる。
口の中の飴玉は、俺の味覚より深い所に溶けた気がした。
柄にも無い事言ったな俺、歳を取ると詩人なるってか? 恋をしても詩人になるらしいな。

「どういたしまして、おじさまが喜ぶと私もうれしいな」

「……それじゃ、行って来るな」

まずいまずい、危うく仕事を忘れてしまう所だった。
寧ろ、仕事投げ出して一日中この子に付き合って遊びまわってしまいそうだった、一日でも無断で休んだら確実に『謎の失踪』にされてしまう職場だってのに。

「今日おそくなるの?」

まあ、何時も通りの夜帰り、一昨日よりは早いだろうが、疲れると無意識に眠ってしまう子供には遅いだろうな。

「しっかり留守番してないと、おじさまは悲しいぞ」

「うん……私、がんばるね!」

今回の言葉は信じるよ。

「……いってきます」

「いってらっしゃ~い!」


太陽に見送られて、家を後にしょっぱい仕事をしに行く。
この夜家に帰って『けいろーの時はおじさまの事をおじいさまって呼ばなきゃダメなの?』と、予測通り吹き込まれた状態の彼女の出迎えで玄関に上がる。
小さな子供の声で『おじいさま』と呼ばれて、ほんの少しだけ別れた妻が連れて行った娘を思い出した事は、墓まで持っていこう。

敬老はまだ続く、多分、イベントが終わったとしても、こいつ等が飽きるまで続く。

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コメント 1

陽

相変わらずいい話書くじゃねぇですかぁぁぁ!!w
by (2008-09-17 21:09) 

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