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木っ端会話文:台風なので古いペンキは塗装し直そう [小ネタ]

「おじさん、すっごくかおいろわるいよ、へいき?」

「心配するな、こういう天気の時は古傷が痛むんだ」

「うん、たいふうがふたつもこっちにきてるんだってさ、いっこはりくにくるって」
「実りの秋だからな、台風もちょっとばかりの片足御免する気なんだろ」

「まいにちまいにちあめ、どのきずがいたい? あしの? むねの? おなかの?」
「……膝のは雨が降る度にシクシク泣き出すんだ、同情するなら摩ってやってくれ」
「うそ」
「あ?」

「ほんとうにいたいのはせなかのすごいのでしょ? せなかのものすごいやけどのあと」
「あぁ……正、解」
「ぼくのからだをみてよ、こんなにきずあとだらけで、おじさんのかんかくがわからないとおもった?」
「人間じゃないと思って少し侮ってた、悪い」
「やだなぁ、ういるすだってびょうきになるし、きずあとだってのこるんだよ?」
「ま…………正直、そいつも痛いが全部痛い……な」

「やけつくように? ほねとにくのあいだにふうせんをいれられて、ぶくぶくにふくらまされるみたいに。
じぶんがすじだけになって、くっついたすじどうしをべりべりはがされて、ぜんぶばらばらにされるかんかく」

「解ってるなら……態々、言わないでくれよ……改めて自覚しちまうだろうが」
「ねつがでるかも、げんかくのいたみにげんじつのからだがいじめられる」

「…………お前も、だろ?」

「そう、でもね、ぼくはとってもいいほうほうをしってる。うまくすれば、えいえんにいたみをわすれられる」
「へぇ」

「だいて」
「嫌だと言ったら?」
「ぼくがだく」
「解った……どうせ、途中でどっちもって事になるんだろうがな」

「きずがいたむたびにつよくついて、ねつでほねがうずくたびにおくをかきまわして、ふるえにくびがこおるたびにせいをそそいで、なんども、なんどでも、うえへ、したへ、にくよくのほんのうにまかせて、ゆめも、うつつも、げんかいのかんかくもわすれて、のこらないきずをのこすように……そうすれば」

「そうすれば?」
「……ふふ…ながあめがくるのがたのしみになるからだに、なれるよ。おたがいに」
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